・また誕生日ですって?と気付いたのです。
今回は別作品で。ツイログを【もうそう】で検索するとよいです。
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「でナ、行った時にオトウサンに他にもいろいろ見してもうてン。(お前のお父さんちゃうでしょ)
したらナ、@@年に来た暑中見舞いがあってナ、その消印がコッチやねん。
でナでナ、ボクらがこの天才的な頭脳をもってやね(余計なことを言わなくていいです)、調べてみたらナ、今はアレやねんビルなってんけど(結論から言いなさい)わかってるヤン言うヤン今、その消印のカンカツの郵便局の近くにあってンやっぱり和菓子屋サン!もーちーろーん?おはぎで有名なー?(やかましいわ)
わかったヤロ?つまり@@年の時、少なくともその夏、オカアサン(お前のオカアサンちゃうやろって)こっちに居ってん!旅行ナンか、住んでタンかはわかれへんけど、それだけは確かやデ。スゴイやろ!ボクの頭脳!(何でそうなんねん)
もちろん引き続きリッサーチしてみるつもりやケド、今のその和菓子屋サンの今のビルの今のオーナーが(何回今言うねんお前)コワイのよ、何て言うンああいうのガロー?カケジクとかようさん並んでンねンけどピッカピカでナ、かえってウサンクサイねん(失礼なことを言いなさんな)。でナ、めっちゃ睨んで来ンねんボクのことコドモの来るトコちゃうみたいな顔で!(被害妄想やろそれは)やってフツーそーゆー店のヒトって和服やんサムエとか(偏見でしょそれも)。ガッチガチのスーツやねんで、しかもオシャレメガネで!(そこ関係無いやろ!もうええわ貸せ)イヤやってボクまだ喋るコトあんねんもー」
と言う通話の後、代わった義兄と通常の会話をした。僕が怪我をして入院している間、彼等は関西に於ける母の足取りを調べてくれていたのだ。義兄はわかりやすく(自分が)まとめた資料をメールで送ってくれると言う。
まだ喋ると背後で仔犬のように吠え立てるのを尻目に義兄は話を手短に切り上げ電話を切った。それでも十数分聞かされた仔犬の声が頭に響いていて、長時間左に携帯を持ち上げていた為に通話ボタンを押す指が僅かに震えていた。
あっさりと退院はしたものの、右腕のギプスはまだ取れそうにない。
倉の整理をしていて倒れてきた棚の下敷きになった時、生まれて始めて父の狼狽した姿を見たが、主たる負傷が右腕だけと判った後は「貴方ガ彼等ニ興味ヲ示サナイ事ニ気ヲ悪クシタノデショウ」と笑っていた。
母の居たかも知れない場所は今、僕を下敷きにした物を売る店になっているのか。
ベッドの上から、父が飾って行った一幅を見詰めた。水辺で羽を休める鳥を描いたものだ。誰が描いたものかは知らない。恐らく父は渡りに飛べない鳥を想起したのだろう、利き腕を使えなくなった僕を見て。
確かに正確な意味も作者も、この家の倉にある古物のほとんどに、僕は興味を持たずに生きてきた。ただ目の前の課題を猛烈な勢いで片付ける事だけに執心して。
そして目下の課題にも自由に動き回れずに居る。
むらと湧いた忌ま忌ましさを、ずらりと並べられたぬいぐるみが削いだ。先の電話の主(当然義兄ではない方だ)が病室に送り付けて来た見舞電報の付属品だった。あまりの量に看護士達が顔を見合わせ笑いを堪えていたのを思い出すと、また忌ま忌ましく思われるのと同時に、笑みもこぼれた。
義兄は友人に恵まれたのだな、と思った。
同時に、目下の課題を一つ増やした。先ずはこの軸の作者から、そしてこの家の所蔵品の総てを。
それならば、片腕でも充分だ。むしろ、片腕の敵討ちでもあるなと思った。
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