・「胴体ぺらぺらの若者(シンデレラ畠山)、漢字王じゃなくなったのに何で“漢字王のマント”着てんだ?」って話。
諸々はツイログを『【妄】』とか『【もうそう】』で検索すると何となくわかるかも、わからないかも。
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・どっかのドアが荒っぽく開けられて俺の楽屋のハンガー類が軽く揺れる。ああ我ながら巨大な衣類よ。
間髪を入れず叫び、と言うかちょっとした騒動、中でもよく聞こえるのは「お前またやったんか!」って声の主は“我らがエース”、出会った頃と比べると普段の声もよく通るようになったよなあ、ってな感慨に浸れる程度の騒ぎ。
『またやったんか』だろうなあと思いながら一応顔だけ出してみたら廊下は静まり返っててこれもいつもの事。慣れっこ的な感じになって来てそれもどうなのかなと思うけど、思ったところでどうなるもんでもない、何をと言わず。
あの胴体ぺらっぺらの子がこんなことになり出して以来ずいぶん血にも慣れたけど、いや慣れたくはないんだけど、原因がわかんない上に誰も追求しようとしないのが不思議。
とにかくどっか行って血まみれで帰って来る。でもまあ舞台もテレビも(勉強も)ちゃんとやってるわけで、この番組でしか接点のない俺には傍観するしかない。以上。
ってそういう気分にはあんまりなれない。どうかしちゃってるのは間違いないんだし少なくとも落ち着かせた方がよくね?って思うけど、“的なこと”を言ったら殴られそうになったって話を聞いてからお手上げ状態。ちなみにエース君は実際ボコられたとか。あの体格のガリ勉同士でドツき合いって想像つかないけど、とにかく恵まれた体格の平和主義者の俺としては痛いの勘弁としか言えない。で傍観。ごめん。以上。
とにもかくにも時間は進んじゃうわけで、楽屋を出たら胴体ぺらっぺらの子、に肩を貸したエース君、以下怯えた顔の連中と視線ハチ合わせする間の悪さ。
熟語も書き方もよく知ってる筈なのに口から出る語彙は少ない子だから必然的に喋りの中身が繰り返しになるんだけど今日はことさら「勝ててたんすよ!」がやけに耳につく。カテテタカテテタ。「勝ててたんすよ絶対!屏風がなかったら!俺が勝ってたんすよ!」マジで、まで最後につけて強調して涙目。
道譲りたいけど腹がね。広い廊下でも気分的な腹がね。で気分的にだけでも壁に張り付くような感じで見送ろうとしたら目の前で倒れた。うわー助け起こしたくねえー目合わせたくねえーって思いつつも屈んだら背中が白い、ってか赤い。あっ裂けてんだ学ラン、って思って気付いた。打撲じゃない傷初めてじゃん?ってこれ衣装明らかに破れてるじゃん。番組的に背中映るよね画面に。
いや替えの衣装なんかあるよな、って思ったけどそういう問題じゃねーなと。血は止まってるみたいだけどそういう問題でもねーなと。床を掻きむしって立ち上がらんとする若者よカッコイイけど痛い痛い爪!
こんな時エース君は何も言わないから俺も何も言わない。コトバって責任あるからね。出たら取り戻せないし。重いもんですコトバ。でこの場の空気も重いって誰がうまいこと言えと。
と見守らざるを得ないところへ足音。のち視界一瞬暗転、すぐ明転。で親方登場。ざいまっす!
「着とけ」ってお馴染みの歌うような語尾上げでつまり暗かったのはマント。脱いで放って被せた、そっか隠れるしちょうどいいよね!ずっと着てたし!って納得。俺らは。
当然納得してない子が立ち上がって黒い布握って突っ返そうと息巻きたいけど膝が折れて「俺んじゃないです!俺のですけど!今は俺んじゃないっす!」って支離滅裂。
親方は意に介さずもう行っちゃったし、エース君も無言で後を追うし、あら!俺?俺が任された系?この番組でしか接点のない俺が?
だもんでしょうがないじゃない。他に言いようがないもの。
似合うんだから、としかさ。