・兄一人に仕事をさせて庄司がのんびり絵を描いていたのには訳があった
さて帰りましょうという段になって有野さんびっくり
「何その杖。マフィアのボスごっこ?」
「そんなごっこないです」苦笑しながら「腰を、ちょっと」
・宿舎へ引き上げすがら後藤の悪態「ヤり過ぎやろどうせ」
「ヤってないですよ!」赤面真顔で
「はいはい早よ帰りましょーね」のんちゃん先生馬耳東風
「触んなやハゲぇ」
・「ヤってないのに!」赤面プンスカ
「なにを?」
「はいはい聡も帰ろうな」兄は弟の耳を塞ぎながら歩き出す
「ちょっ待って下さいよ」杖をついて斜めになったまま歩き出す
・兄は礼二からワゴン車を借りてきていて、弟は喜々として乗り込む
「とおまわりしょーな」
「ダメ」乗り込む庄司を介添えしながら兄バッサリ
「なんでー」ほっぺたふくらませる弟「したらすぐやーん」
宵昂園からアパートまでは車で走れば5分もない距離である
「庄司は家にじっとしとく約束やったやろ」キリッと断じる
「だって、聡君いなくなったらすげー家ん中サミシくて」
「けど動いたらアカンてヒデさん言うてたやろ」ちゃんと少し怒ってる兄
庄司ショボーン「だって…何もできなくてヒマだし…」
・怒ってる人を見るのも怒られてる人を見るのも弟は苦手
それが大好きな兄と庄司ならなおさらだ
5分間窓に額を押しつけて黙ってる弟
・そして庄司に科せられた罰は布団への強制連行と
ものすごい簡素で味の薄い兄の手料理
「オレ自分のことを敢えてさしおいて言いますけど亮さんちょっとコレは」
「ええから食べなさい」なおもコンロと格闘しながら「もう一品いくで!」
こっそり冷蔵庫からケチャップ取り出す弟
「あー聡君オレにもー!」
・夜の9時から横になって何もできないなんて常に動いていたい庄司には地獄
そこへ弟がふすまを開けてにじり寄ってきた
「ひまなん?」
「ヒマだよ」泣きそう「どうしよオレ絶対寝らんねえと思う」
「これかしたる」ポケットからこっそり
「何?」手の中でチリンと鳴る
「ちえのわ。」
・よゐこ園で密かに流行中だというソレはツカっちゃんが発信源らしい
「脳年齢がな、68て出たんよ。俺まだ死にたないねん」
100円ショップの物を買い揃えてオーブン待ちの間にカチャカチャやっているとか
ツカっちゃんが解いた物から順に皆に回って来るという仕組み
・「おれはもうできた。すぐとれた」で、またはめたのだ「あしたひろしにかすから」
「明日までってこと?」
「すぐとれるよ、ほんまに。あとはな、どんだけはやくとるか?とかやんねん」
「そっか、ありがとネ」
・一時間後
汗をかき始めた庄司がそこに居た
どうカチャカチャやってもダメだ!明日まで!いや明日までとかじゃなく、すぐ取れるって言ってなかったか?オレがおかしいの?いやコレがおかしいんだろ!聡君はめなおす時間違えたんじゃないか?もう一時間になる?マジで?オレヤバイの?オレ脳年齢68歳?!つかそういう問題じゃなくない?!
「しょー兄」ふすまがちょっと開いて覗いてる
ギクリ「なな何」
「まだでけへん?」
「でででできたよ、リトライ中!ってか何でわかった?の?」
「かちゃかちゃいうてた」耳は尋常じゃなく良いのだ
「庄司早よ寝なアカンよ」弟の顔の上から「痛み止め飲んでんねんから」
「はい!はい!早く寝ます」
・二時間後
灯りを消した布団の中でなおも汗をかき続ける庄司がそこに居た
そもそもこれって外せる構造になってなくね?とまで思い始めて涙目である
・弟が寝ついた後、そっと様子をうかがう兄
ふすまをちょっと開けると
布団をかぶってモゾモゾしてる庄司の姿(と言うか布団)が目に飛び込んできた
「ジブン腰悪いのに何してんねん?!」
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