どせいさんの かくればしょで ごじます。 ぽえーん。



         はじめての人は鍋底についての注意書きをかならず読んでほしいです。 どせいさんに ついてはこれをよむです。

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はしごごっこです。あきないのです。
 ここから買ってもらうと
 僕に小銭が入るです。
 そうです。
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 兄弟篇についてご存知ない方はまとめページからご覧下さい

・続き部分は残酷描写があります
_____

 春の夜、礼二の店。
 カウンターで背を丸める野球のユニフォーム姿の巡査、箸で丼の中をかき回し続けている。
 その隣でモノがおこげを少しずつパリパリ食べている。
 カウンターの隅、定位置に絵師。
 そしてテイクアウトを待っている弟と庄司。
 テーブルには酔っている有野さん。
 チャーハンと礼二がそれぞれ鍋を振るう。いつになく盛況である。

 電話。
 「はい中川飯店!お、学者先生。へえ、いつもの。2人前。まいど!」
 礼二がすぐに支度に取りかかる。
 水餃子の白湯
 白菜ともやしと白ネギとイカの炒め
 白粥
 杏仁豆腐、クコの実は乗せない
 この「いつもの」メニューは弟はすっかり覚えてしまっている。
 「あとガワな」礼二の指図にチャーハン無言で応じる。

 カウンターに顎を乗せた弟、二人の手際をじっと見ている。
 「なんで…」
 喋るたびに顎を支点に頭が上下する。それを見て絵師クスクス笑う。
 「なんでしろいおっちゃんは、しろいもんしかたべへんのかなあ?」
 巡査の丼の中(麻婆丼)を見つめ「いろいろ、おいしいのにな。いろ、あ」いろいろの“様々”と“color”が掛かっていることにビックリする弟。庄司を見て「ね!」みたいな顔。庄司笑顔で頷く。
 その言葉に若干緊張した視線を送るモノ。しかしすぐに視線をおこげに戻す。パリパリ。

 有野さん、おぼつかない足取りでビールを取りに来て
 「そうやあの子、俺もよう知らんけど、何であんな」ゲーップ「何であんななってもうたんやろね」
 「先生そのへんにしときなはれや」
 「なあ?ふしぎやなあ」弟顎カクカクさせて「なんでやろ?」
 その目の前に持ち帰り容器がドサドサと「早よ帰れや」ビニール袋も投げつけるように。文句を言おうとする庄司に対して素早く背を向けるチャーハン。
 3人分の夜食を袋に詰めていく庄司。「じゃ、帰ろか」
 しかし弟はカウンターでぴょこぴょこ跳ねながら「なんでなん?おっちゃんしってる?お兄は知らんの?」

 礼二、出来上がった白いものを白い容器に詰めながら「ほんならそこ行く筋肉に出前を頼もうかね」
 「え、オレ今日両手荷物なんすけど」足下に買い貯めした野菜が。
 「ほう、それは失礼」礼二顔を横に向け、小声でなく「筋肉見かけ倒し、と」
 「持ちますよー持って帰りますよォーうらー!」上着を脱ぎ捨て両手に野菜、「聡君おべんと持て!おぶされえい!」笑いながら飛びついた聡を背に走り去る庄司。
 見送りながら、静かに戸を閉めるモノ。

 俄に静かになった店内。
 巡査がぼそりと「何でなんや」丼に顔を突っ込むようにして呻く。
 モノ、平坦な低音で「守秘義務言うもんは解ってるやろ」
 「なんで…あない打たれたんや俺は」
 「そっちかいな」
 呆れ顔で敗戦投手を見遣る。

 不意に絵師、椅子から降り、小さな歩幅で店内を横切り、戸口から手を出して札を裏返す。後ろ手にカギもかける。
 その様子を驚きをもって見ていたモノ。
 絵師、笑みをたたえてモノを見つめ「俺も知りたい。“そっちやない方”を」
 舌打ちと共に店の裏へ消えるチャーハン。
 カウンターに片肘をついて見下ろしている礼二。
 (寝こけている有野さん)

 「――脅迫ですか?」
 「何を大げさな。食うのんが遅うして閉め込まれただけやないか」
 「そして世間話、と」
 思いがけない兄弟の包囲網に、巡査も流石に顔を上げる。
 「ぼちぼち吐き出したいんちゃうか、兄さんも」
 「俺もな、ほとんど知ってんねん。ただ、どんだけ把握してんのかを俺が把握できてない。それがめっちゃいらいらすんねんな。猫に胸の上乗られてるみたいなな」

 「お前、知ってんのか?どんだけ、言うレベルのことまで、知っとんのか」巡査、モノの細めた目を凝視して訊ねる「俺らみたいな末端は何も知らん。お前はどんだけ知ってんねん?」

 ほぼ全てを知っているであろう情報屋の兄弟、そして逃げようのない状況。
 観念したモノ、静かに口を開く
 「飯屋でする話やないと思いますよ。
 こない言うたら失礼やけど、グロい話や


 「それでも知りたいですか」
 「聞いた限りは、知りたない言うことはないわな」
 小柄で童顔ではあるが、絵師は揺るがない意志を漲らせている。
 モノはその凄みを身に滲みて感じた。

 「とりあえず、白に執着してはる訳ではないと思います」
 「色やな?色が、恐いねんな」
 「恐いというのが適切やどうや、俺には判りません」

 数年前に発生した連続殺人。
 あまりにも猟奇的で、あまりにも異常に過ぎた。それ故に、一般的な報道はなされなかった。それが異常な事件だと知っているのは、ごく僅かな関係者だけだ。

 アメリカに拠点を置き、犯罪心理学者として活躍していた白い男。
 請われて帰国し、その手腕を発揮していた矢先のことだった。
 当初、気付く者は他になかった。
 しかし、白い男だけが見抜いた。「始まりだ」

 著しい黄疸を生じている者
 深緑に死蝋化した者
 鮮血で部屋中を赤く染められた者
 珍しい橙色の虫が全身に集っていた者

 そこまで話したあたりで有野さんがトイレに駆け込んだ。
 激しい嘔吐の声が聞こえて来るも、話の内容に因るものではないことは全員承知していた。モノの声はそれだけ低く微かで、有野さん自身の鼾の方がよほど大きかったからだ。
 巡査はユニフォームを第二ボタンまで開け、丼を目の前から押し退けた。いくらおごりと言われても、食欲は湧かない。

 姿の見えない犯人は『虹』と呼ばれた。
 色に固執した犯行は、いつ果てるとも知れない。
 被害者の体内や身辺に、明確なメッセージが残されている。
 全てが、気鋭の分析家である男を名指ししていた。
 ただの殺人ではない。既に事態は決闘と化している。

 「あの人も、負けてはったわけではないと思うんです。勝ち負けの問題ちゃうかも知れませんけどね」
 モノは手元のおこげをひたすら細かく砕いている。
 「全部読めてはった。ただ、捜査自体が、後手後手に」

 男がいくら緻密な分析をしても、全てが捜査に反映されるわけではない。むしろ反発も招いた。
 如何に有能であったとしても、犯罪そのものを防げるわけではない。増してこの事件は、男が居なければ起きなかったはずだ。

 「責任感と、あとは、受けて立つ…言うようなところがあったんでしょう。
 気張ってはったらしい。ずっと。自分が食い止める言う気概があったらしいです。
 ただ、あの方の方が」

 現在“もじゃもじゃ”として知られる変人は、当時の若手随一と言われた法医学者だった。
 未だ万全ではなかった日本の法医学の新時代を開拓すると嘱望されていた。
 大学からの親友である小林の叡知を支えていたのだ。

 『虹』も、その存在に気付いた。
 ある日解剖を担当した死体が、彼の名を呼んだのだった。
 喉に仕掛けられた小型のレコーダー。遺体が発見され、解剖に回される時間まで計算され尽くしていた。
 「片桐仁。執刀してんのお前だろうなー。あのさー、お前も、混ぜるから。入れてやるから。」
 気の抜けた、しかしどこか耳障りな声。初めて記録された犯人の物証。
 その日から攻防は激化する。しかし、同時に片桐の精神は摩耗していく。
 凄惨を極める遺体。生命を嘲るような犯行の手段。事実彼らを嘲るメッセージの数々。

 ある夜、片桐が帰宅すると、部屋中の水槽が割られ、青い魚ばかり――2cmばかりの小魚に到るまでがすべて“ひらき”にされていた。
 慄然としているところへ、電話が鳴り「お前が居ないんじゃ意味ねえだろ」耳障りな怒気が一方的に叩きつけられた。

 「その晩らしいです。あの人飛び降りはったん」

 片桐は自室のベランダから身を躍らせた。一命は取り留めたが、数週間の入院を余儀なくされる。
 意識を取り戻してからも、意味の通らないことを叫び続けた。内容は全て、恐怖を意味していた。

 小林は現場に掛け合い、指揮権に近いものまでを掌握する。
 既に“七色”が犯人の手に落ちている。
 『お前の友達には気の毒なことしたよなー。わるいなー。
 けどしょーがねえや。弱いんだもの。
 これさ、俺さ、本来はな、
 人間ってどんだけ強いのかなーってことなわけよ。
 けど途中で変わって来ちゃってさー。
 むしろどんだけ弱いかって話になっちまってさー』

 その声明の後、『虹』は犯行を完遂したのではないか、という声もあった。
 しかし小林は「まだ終わっていない」そう言い切って憚らなかった。

 諦めずに追い続けた結果、遂に彼らは犯人に先手を打つことに成功する。
 だが、それもまた後手に過ぎなかった。
 踏み込んだ部屋の真ん中で、『虹』は真っ黒に焼け焦げた遺体の首を下げて立っていた。
 「何だよ、早ぇなぁー」
 痩せたメガネの男は、悪びれるでもなくそう言った。
 「小林、お前、けっこうやるじゃんか。うん、結論として、お前はけっこうやる。たいしたもんだよ」
 そう言って黒い首を小林に向かって投げてよこした。

 「七色と、黒と」礼二は食器をすっかり洗い終わり、布巾を干しながら呟いた。
 「『早い』言うてたんか。まだ続く筈やったんやな」絵師は定位置に座り、首をひねりながら箸をペン回しの要領で弄んでいた「そいで、白か」

 「白だけは守ったった、言うことなんかな」
 
 青ざめた巡査が伺うようにモノを見上げた。
 モノは、すっかり冷めた巡査の丼に目を落としながら、低い声で告げた
 「白しか守られへんかったと言う事ちゃうんかな、と俺は思うんです」

 人命も、友人の心も守れなかった。
 白が標的に含まれていたのかどうかは判らない。『虹』はそれきり何も語らず自ら命を絶ったからだ。
 最後に残されたのは、無地であると言う事だけ。

 「他の色に触れる権利がない、と言うような」

 4人それぞれが、物思いに耽って言葉をなくした。
 時計の針、そして蛇口から落ちる雫だけが聞こえる。

 と、トイレのドアが轟音と共に開いた。
 「さむい、さむい」
 ガタガタ震えながら有野さんが転げ出てくる。
 「忘れとったわ」「先生寝とったんかいな」
 歯の根が合わない有野さんを介抱する兄弟。
 ちらりと送られた絵師の視線から、この話題が終えられたことを悟るモノ。

 「帰ろか」代金を置き、席を立つ。
 「カギは、開けて良いんですよね」
 「カギ開けんとドア開けられへんのやったら、ええで」
 首を竦め、外へ出る。
 夜風が一段と冷たい。
 後ろからついてきた巡査が「何でなんやろな」と呻きながら自転車のチェーンを外す。
 「何で人間て、そないなんねやろな」

 「ああ、そっちか」
 モノは敢えて明るい声で応じた
 「お前のことやったら、球の軽さやろ」

 「走り込め。己を磨け。諦めんと」憮然とする巡査を振り返り、モノは笑顔を作った「俺も諦めへん」
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