暖かい春の日、弟とことこ図書館へ向かう
いつもの習慣で河原へ寄り道
すると開けたところにもじゃもじゃの姿が
何やら長いものを持って暴れている様子
「もじゃもじゃー」
声をかけるが反応がない。側へ行ってみる
何かと思えば、度々乗っている竹馬だ。その一本を素早い動きで巧みに振り回している。
「ふッ」とか「しャーッ」といいう激しい呼気を“声で”発し、たまに背中で回転させた一端が後頭部に当たって「いて」とか言っている。
5分ほど続いた一通りの動きの後、「ぇあぁーい!」とお馴染みの一声で演舞は終了
「もじゃもじゃ」
「あー聡い!すっげ久しぶり!」
「きのうおうたで」
「だよなー!」
「なにしてんの?」
「秘伝」立て掛けてあったもう一本と共に回転させてその上に飛び乗り「竹馬拳法!」
弟、頭上のもじゃもじゃを見上げて「けんぽーちゃうやん」
「あー、じゃ剣法!カタナ!の方の剣」
「かたなちゃうよ」
「いいのー!いいんだよォー」竹馬じだんだ
「んでなんでそんなんしてんの?」
足を振り上げるようにして飛び降り「強くなるためさ!俺のこの竹馬で!こうして!」かっこうよいポージング「戦うんだ!」
「だれと?」
「悪いヤツとに決まってんじゃぁーん!悪いヤツ、」そこで途端に顔色が悪くなる「悪いやつ…」
「もじゃもじゃ…?」心配そうに顔を覗き込む弟
「わるいやつ…いつどっから来るか…わかんないもん…つよくなんなきゃ…また…」すっかり青ざめ、口の中で同じことを繰り返すもじゃもじゃ
そこへ土手の上から声が「頑張っておるようじゃな」
見上げると白い男が白いつけ髭姿で
「しろいおっちゃん…?」
呟いた弟の隣でにわかに活気を取り戻すもじゃもじゃ「あー!御師匠さまー!」
「確実に伸びておるな。いっそう稽古に励むが良い」
「はい!おれ頑張りまぁーす!」
鷹揚に頷くと去って行く白い男(+髭)
呆然とそれを見送る弟
そして数分後、白い男(髭なし)現れ「やあ、随分探したぞ友よ」
「あーけんたろー!さっきねー御師匠さまがねー!」
目が泳ぐ弟(その後一日泳ぎっぱなし)
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