どせいさんの かくればしょで ごじます。 ぽえーん。



         はじめての人は鍋底についての注意書きをかならず読んでほしいです。 どせいさんに ついてはこれをよむです。

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・いちげんさんは 過去ログを読むといいです。『兄弟篇』というやつです。
 いちげんじゃないさんはおひさしぶりです。そうです。
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 膝から床に手を着いた時に、胸ポケットの中で揺れたんですよね、空薬莢。
 肌身離さずってワケじゃありませんけど、何かって時には懐へ入れてンですよ。アタシのお守りがわり…って言うよりかは、厄落としみたいなモンです。
 生まれてこの方貧乏クジしか引いたことがないっての、一つ話ですけどね。その最たるモンがコイツってワケです。これより悪いこた起きないだろうって了見で。

 大して似ちゃいないその音で思い出したんですよ。
 『ガチャガチャ』ってあるでしょう。100円入れて、丸いカプセルが出て来る。
 アレをね、させてもらえなくなったんですよ。うんとガキの頃です。小学校の2、3年かな。

 そうこうする内、菓子パンを買って貰えなくなりましてね。特にねだったりもしなかったわけですけどね、こう見えてアタシ、坊ちゃん育ちだもんで。ワガママてモンの引っ込め処を心得てたんですよ。

 ただ不思議でしょうがなかった。坊ちゃん育ちのテメエがどうして誰かのお下がり着る羽目になったのか。何せアタシにゃ兄弟がないんですからね。
 羽振りのよかった両親が辛気なツラで夜中までボソボソ話し合って、優しかったお袋が金切り声上げて泣き出したりするのも。
 飯が一日一度になったのも。学校から帰って来たらお袋が居なくなってたのも。
 秋口の海へ親父に連れて行かれて「泳ぐか」って言われたのも、寒いからって拒んだら親父だけが海に入って行って、それっきり戻って来なかったのも。
 あの頃のアタシにゃ不思議でしょうがなかったんです。本当のところ、今でもわからない。どうしてかってことがね。

 気付いたらアタシャ、ここ、今土下座をしてるこの事務所に居たわけです。
 身の不幸引っ提げてグレたわけじゃありません。自慢にもなりりゃしませんけどね、“不良”ってなモンだった時期ってのはなかったんですよ。学校に行ってないんだから“不良学生”じゃないのは道理ですけどね。
 『人の嫌がることを、人を嫌がらせるためだけに行ったことがない』ってことです。悪いことは悪いって知ってましたからね。何せ坊ちゃん育ちなもんですから。

 ただ金の為に、生きる為に、仕事をしなきゃならなかった。必要に足る仕事、自分と他人、双方の要求を充たす仕事を。選択の余地なんてあったもんじゃないですよ。少なくとも、当時のアタシャそう思ってたんだ。

 そういう意味じゃアイツと同じです。アタシより派手な髪の、あの『兄ちゃん』。あんな金髪は男前だから似合うんでしょうね。アタシにゃ無理です。

 ともかくもアタシャ大人と呼ばれる年頃にはケチなチンピラになってた。なりたくてなったわけじゃないありませんけど、今更言い訳する気にもなりゃしない。
 どっかで道を違えてりゃまるで違う未来が…っての、アタシはどうしても信じられないんですよ。なるべくしてなった。きっとそうです。どいつもこいつもね。

 そして今、アタシは埃っぽいカーペットに額を押し付けてる。平身低頭。他に何も出来ることがない時にする格好。

 今アタシの目の前に(上に)居る野郎は、唸る程金持ってる癖して、異常なまでにシブチンでね。これだけの規模の組織のこんな街に構えた事務所に、レンタル落ちの事務机で済ませやがる。引き出し開けるたんびに奥の方で錆が軋んで、虫酸が走るったらないです。
 最もその音も、この男の性分よりかはどれだけマシか知れませんけどね。

 アタシはこの人には頭が上がらない(今のこの状態の話じゃありませんよ)。恩義はある。尊敬しているところもある。何せその手腕たるや確かなモンで、…まあ、悪いことは悪いって知ってる身には、それが一塩ってことです。
 ただこの人は、アタシのして来なかったことをする。むしろ、それを好む。そういうタチの人間だ。人間にそういうタチの種類が居るってことは、知らずに済めば知らないまま生きていたいモンですけどね。

 事務机の上に腰掛けてブラブラさせてた足が、アタシの後頭部に乗った。そして、踏まれる。これしき、どうってこたないんです。屈辱ってものはいつの間にかさしたる意味を持たなくなりましてね。ただ額が熱い。革ジャンのファスナーの金具が顎にコツコツ当たって、そのリズムがやけに気に障る。

 「まだなのかなあ」
 わざとらしく長閑な口調だ。この人はいつでもそう。幹部にゴマする時も、その娘(酷いブスだ)と結婚にこぎつけた時も、一事が万事この調子だ。
 「あの子、あの役立たずの子、どうして放っておくのかなあ?ちゃんと着いて回ってるんだよねえ?」
 アタシの答えは必要無い。この人のハラはもう決まってるんだ。あとはアタシがどう括るか…腹か、首か。愚にもつかないシャレじゃありませんか。

 「どっちでもいいんだって言ってるから。お兄さんの方でも、弟さんの方でも。ね。どっちかだけなら、できるでしょう、あの子にも」
 アタシの頭を(ゆっくりと体重をかけて)踏み付けて、カーペットに足を降ろした。靴も安物だ。こんな安物に踏まれたって、痛くもありゃしない。

 「ねえ、もし今度手に負えなくなったら、ねえ」
 出て行きしなにアタシの左胸を指差した。
 「使いなさいね、それ」

 立ち上がると、胸ポケットの中で空薬莢がまた動いた。右の襟のすぐ下。革の上から触れてみる。異常ナシ。貧乏クジは貧乏クジのまま。オーライ。
 そのまま手を下ろして行く。ホルスターはいつもの右の腰。あの人が指差した左胸には、銃はない。
 あるのはアタシの心の臓と、一丁のバタフライナイフだ。

 いじましく銃底にかけていた手で、額の埃を勢いよく掃った。ついでに髪も整え直す。ちゃんと立ち上がってないと、思いの外ただの好青年に見えちまうんでね。

 そうして、首を括るってのは下手なシャレだと思いましたよ。括るんなら、やっぱり腹だ。
 そうそう、もう一つありましたっけね。“締め括る”ってヤツが。
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