兄弟篇についてご存知ない方は
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絵師の部屋。
カーテンが閉められ薄暗い。
コタツで眠っている絵師と数匹の猫。
携帯の着信で目覚める。コタツの上に散乱した数台のうち、どれが鳴っているのかわからない。
手探りするうちに鳴りやむ。
身を起こしてどうにか手繰って確認、聡から。時刻は11時30分。
絵師にとっては早朝だ。
コタツから這い出てしばらくじっと座る。
猫が寄って来たので、飯の支度、水の入れ替え、トイレの始末。
窓を開け、PCの画面確認、株価などもちらと確認。
そうするうち、チャイムが鳴る。
「ごめんください」
張って行きカギを開ける。
「お兄おはよう」
唸って返答とする。
「お兄あさごはんはー」
適当な返事をすると、ちゃんと食べろの、まず水を飲めの、礼二と同じようなことを言う。ちょっと笑う。
聡が冷蔵庫からプリンを出してくる。スプーンも持ってくる。ありがたく頂く。
「お兄なにきていくの」
「このままや」
またひとしきり小言を言われる。「だめでしょ」などのあたりは亮にも似ている。またちょっと笑う。
聡が妙なえりまきをしているので訊ねる。亮の長袖Tシャツを畳んで巻いているとのこと。いいアイデアだと思う。
寒いのでスウェットの上にウォームアップスーツを着る。ガサガサ言うので好きではないが仕方ない。
かくして部屋を出る。
図書館カードは聡に貸しっぱなしになっている。聡の返却のついでに久々に行ってみる。
外出はほとんどせず、礼二の店でビールを飲む程度だが、聡のお供なら気が楽。
土手を歩き、四葉のクローバーを探そうとする聡にちょっと付き合う。
シロツメクサの語源も話して聞かせる。
感心される。ちょっと嬉しい。
図書館では成果今ひとつ。どのみち延滞してしまうので、当たり障りのないものでお茶を濁す。
聡はまた絵本を借りている。
隣で仕掛け絵本を見ていて、『仕掛け絵』の構想を練る。
まだ四葉を探すという聡と土手で別れる。
一人で病院へ向かう。
途中でBとすれ違う。最近やけに卑屈な様子だったが、今日は目を赤く腫らせている。
小腹が空いたので手近な店を覗くが、混雑しているので諦める。
病院の玄関先で不動産屋の相方と遭遇。
「どげんですか」
「ぼちぼちやな」
短いやり取りの間に不動産屋出てくる。涙目。
また診察で喋りすぎたのだろう。テンション上がりすぎ→後悔、の繰り返しは不憫だ。
調剤薬局へ向かう二人と行き違いで病院へ。
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今日も四葉を見つけてごきげんな弟。
借りてきた「ねずみくんのチョッキ」は背中の小さなデイバッグに入れてあるので安心。
(先日のボケナス禍の後、しょー兄が持たせてくれた)
河原で石切りをしているまさる君と博を発見。
博に英字ビスケットをもらう。
石切りはしたことがなかったが、博のたどたどしい説明でコツをすぐ体得。
最高記録5段。
「じぶんうまいやんけー!あとから来てー!このー!」
悔しがるまさるを後に、帰路へ。
角の向こうから「ヌヘヘ!」と笑う声あり。緊張する弟。
『何があっても絶対についていってはいけない』を言い聞かされている相手だ。
よろよろと歩いてくる風俗店の店長。
何故か頭から血を流している。既にどこかで何かしてきたようだ。
「聡君。聡君。今日はな、そういうんちゃうねん」
身構える弟。
「大丈夫大丈夫。ほら、これ見てみ。隣の駅にな、アイス屋さんできてんで。
アイスばっかり売ってんねんで。ええやろ。
食べに行こか。おっちゃんおごったるから。
大丈夫やそんなんちゃうから。お友達になろうやないか。な。
お友達やったらいっしょに美味いもん喰いに行くやろ。
ほら、チョコ味のだけでもこないあんで。好きやろチョコのアイス。な」
チラシを手にじわじわ迫り来る。
「そうや兄ちゃんにもオミヤゲに買うたらええよな。それもおっちゃん買うたんで。
な。一緒に行こう。な。聡君。聡君よ。おっちゃんと一緒に行こうやないか」
じっと身を固くしていた弟。
ポケットからビスケット出し、それを包んでいたティッシュを素早く手渡し、
一目散に逃げ去る。
そのティッシュで額に流れる血を拭いつつ
「――ええ子やで…ええ子や…必ず…落としたる…!」
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絵師、散々待たされてようやく薬をもらう。
このへんの裏ルートもそろそろ作らなければと思う。
出たところで不動産屋の相方の車を発見して驚く。
「帰りんしゃる頃やろ思いましたけん」
心遣いに感謝し有り難く乗せてもらう。
道中の会話、不動産屋の病状について。
薬が合わなくてまたも副作用が出たとのこと。同情。
相方についても、常に影となって支える姿勢を讃えておく。謙遜される。
帰宅。ひとしきり猫の世話。
プリンを食べて、昼寝。
礼二からの電話で目が覚める。店に来ているとのこと。
チャーハンとは顔を合わせたくないものの、出掛ける。
店には亮と聡と庄司が来ている。しばし談笑。
聡がビスケットを取り出して皿の上に並べ始める。
チャーハンが「持ち込み禁止や」と言うので箸袋を丸めて投げつける。
亮にはR、庄司にはSを贈呈している聡。
ローマ字を解すようになったかと驚いていると偶然だとのこと。
一つ残ったCをもらう絵師。
「お兄の、なんの字でもないの?」済まなさそうな顔の聡「ごめんねお兄」
絵師、ひとしきりCをいじくり回して、ふと思いつく。
90度回して
「鬱病のUでええんちゃう」
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