どせいさんの かくればしょで ごじます。 ぽえーん。



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 兄弟篇についてご存知ない方はまとめページからご覧下さい
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 雪は舞う程度で止んでしまい、枯れ木をうっすらと覆うに留まった。
 昼にはすっかり解け、いつもの街の日常が戻ってくる。

 絵師は雨戸を開け、日だまりの中で再び微睡み始めた。
 礼二は散々ぼやき散らしながらチェーンを外す。
 チャーハンが蹴ったラードの缶からは解けた雪が冷たい雫となって散った。

 そんな日常の中を、俯いたまま弟が歩いていく。
 行き違う相手はいつものように声を掛けるが、前髪の影から見上げ、か細い声で応じるだけだ。

 「元気ないやないか、どないした?」
 「きょう、おれ、たんじょうびやねん」
 「何や、オメデトウやないか、何を辛気くさい顔することあんねん」
 「おめでとう、ちゃうねん」

 わずかに背を丸め、白いマフラーを胸に抱え、狭い歩幅で歩いていく後ろ姿は、見た全員に弟と初めて会った日のことを思い出させた。そのまま不意に消えてしまうのではないかと思うような儚さ。兄の影からこちらを見上げる怯えた目。
 親しくなってからの無邪気な明るさからはついぞ甦らなかったその面影に、誰もが不安と共に一抹の寂しさを覚えた。

 公園でブランコを漕いでいる弟の傍らに、いつの間にか兄の姿があった。
 「庄司が何かできた言うてたで。冷めんうちに食べよ」
 弟は俯いたままだ。

 兄もブランコへ腰を下ろす。
 「何か、あったか?」
 しばらくの間、マフラーに手を突っ込んだり手にぐるぐる巻いたりしていたが、弟は遂に顔を上げた。
 「おれ、うまれてこんほうが、よかったんちゃうかなあって」

 「誰かに、そない言われた?」
 「いわれてない。おれが、そないおもた」
 「何で、そない思た?」

 「おれが、うまれたから、兄ちゃん、ずっとしんどいおもいしてんねやんか。
 おれがうまれへんかったら、兄ちゃん、こわいしごと、しんどいしごと、せんでもよかったし、兄ちゃんひとりで、やりたいこと、なんでもできたやんか。
 おれ、みため、こんなんやから、いろいろ、へんなことなるし、
 あたまもわるいし、おれひとりやったら、なんもでけへんし、
 おれ、兄ちゃんの、あしでまといや。
 おれなんかを、いっちょけんめ、そだてるために、兄ちゃん、ずっとがんばってて、兄ちゃん、かわいそうや」

 ブランコの軋み、ヒヨドリの声、その中に弟のしゃくり上げる声が混じる。

 「そんなん、思わんでええよ」
 兄は努めて穏やかに切り出した
 「思わんでええというか、思って欲しないな、俺は。
 やってな、
 聡が、生まれたから、俺ら、兄弟になったんやで。

 あん時、確かにあん時は、聡小っさかったしな、これからどうしょ思て、ちょっと、うん、どうしょ思たよ。けど、そん時だけや。
 やってな、もし聡居れへんかったらな、俺一人やで?あん時に一人になってもうて、そしたら俺、しんどい仕事はせえへんと済んだか知らんけど、そんなん、恐いわ。想像つけへんよ。聡が居ったから、こんな俺でもな、やって来れてん。

 それにな、聡が居ったから、いろんなええ事あったで。
 絶対話せえへんような人とも仲良うなれてるし。
 俺にはでけへんこと聡なんぼでもできるしな。
 もし俺にも聡にもでけへんことあったら、どないしたらええかなってめっちゃ考えるようになったしな。

 庄司のこともそうやで。聡が居ったから、俺、庄司を護ったらなあかんと思たんや。
 もし聡があないな目に遭うてたら、って思たから。
 そんでな、そん時からや。
 俺にできることは全部やろう、できること全部どんどんやってこう、って思たんや。
 こんな俺にでもできることがあんねやったら、聡のために、みんなのために、頑張ろって思たんや。

 聡が居ったから、俺、兄ちゃんになれたんやと思うよ
 生まれてくれて、ホンマ、ありがとうって、ここコの底から思てるよ」

 最後の最後で決定的にカンだが、兄は穏やかに弟を見つめた。
 弟はそんな兄を、数年前から自分のそれより下の位置にある目を、前髪の影から見上げた。

 「こない言うても、生まれて来ん方が良かったって、思うか?」
 「…わかれへん。ちょっとおもう。けど、おもいたない。けど、ちょっとおもう」
 しかし弟は、マフラーを抱いて笑顔を見せた。
 「けどな、おれな、兄ちゃんの弟にうまれて、うれしい」

 すっかり晴れ渡った空の下を兄と弟は肩を並べて家路についた。

 帰りが遅いことを心配して捜しに歩いた間に煮詰まってしまった庄司の「何か」は急遽水を足して煮直された挙げ句酷い味になったが、それでも三人は笑顔でささやかな祝宴を楽しんだ。

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